2011年 05月 14日
第10回長野県建築文化賞 抜ける空間を内包する家 奨励賞受賞
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抜ける空間を内包する家 B-JAW HOUSE
■コンセプト
敷地は安曇野穂柏原、安曇野市郊外雄大な北アルプスを西に望む分譲住宅地にある30代ご夫婦、娘さん2人の住まいです。
配置計画では、将来娘さんが現在家庭菜園の場所に住宅を建築することを想定するとともに安曇野のランドマークマウンテン北アルプス常念岳を真っすぐ捉える板塀アプローチを玄関動線として西奥まで導く配置としています。板塀は、近隣からの目線を気にせずアウトドアライフを愉しむ高さとし薪置き場も併用しています。南ウッドデッキオープンエアテラスにはガラスと木格子の目隠し物干しを併設しています。外観は太陽光発電パネルの将来増設可能な想定とロフトの多様な使い方から片流れのシンプルな形態の要望から決められました。内部空間構成は大きな抜ける空間に全ての諸室が繋がります。この繋がる空間を温熱環境計画に利用し建物断熱性能の検証により決められた薪ストーブ1台での全館暖房、南1.4mの深い庇で夏の日射を遮断し、吹き抜け大窓で冬の日射を受け入れます。
廊下のない目線の抜ける空間構成は、それぞれのスペースを広くゆったりと使うことができます。キッチンは家族みんなで料理できる配置スペース、和室は遠方の両親の宿泊のため、日常は解放し使えるフレキシブルな障子戸を設えています。2階プレイスペースは将来の子供部屋として容易に仕切れる梁を配置しています。勉強する場所はキッチンダイニング、子供部屋への動線階段は必ずリビングを通過して配置、パソコン・TVは個室に入れない家族の会話・コミュニケーションを一番に考えたいという建主の暮らし方を構成した抜ける空間を内包する家です。長野県産木材を、70%以上使用した信州ふるさとの住まいの助成金を受けています。
■講評
常念岳を望む風景はこの敷地が持つ特性であり、この特性を最大限に利用したアプローチは建築に奥行きを与えている。アプローチを構成する板塀は、この建築を包む豊かな外部空間をプライベートな部分とオープンな部分とに分割し、個の部分と地域社会との接点の部分とを明確に表現している。日常的な人の動きが見事に整理され、生活の様子が手にとるように見える平面計画は設計者の力量を示すものであり、ここで生活する家族への深い思いやりを感じることが出来る。
周到な断面計画と温熱環境計画によって生まれた開放的な生活空間は、賑やかな会話が飛び交い健康的で和やかな家族の日常が想像される。子供達の自我意識が成長し大切に思うようになった時、プレイスペースをどう組み立て直すのか、住まいにおける個の空間のあり方など、小住宅が持つ「公の場」と「個の場」について考える時が来るのかもしれない。 (出澤潔氏)
■審査委員長 東利恵氏 ■審査委員 出澤潔氏 ■審査委員 関邦則氏
B-JAW HOUSE 過去の掲載
by ogarchi
| 2011-05-14 15:38
| WORK